吸着クランプとは


切削加工や研磨加工、検査・測定の現場では、
- 「薄物ワークが変形する」
- 「クランプが工具や測定子の邪魔になる」
- 「アルミや樹脂を傷つけたくない」
- 「フィルムや基板を平面に保持したい」
といった固定の悩みがつきものです。
こうした課題に対して有効なのが、ワークを面で保持する吸着クランプです。
吸着クランプには、
- 鉄系ワークに適したマグネットチャック
- アルミ・樹脂など非磁性ワークに適したバキュームチャック
- 薄物ワークや検査工程に向くセラミック吸着テーブル
などがあり、ワーク材質や工程に応じた使い分けが重要です。
また、吸着クランプは一般的な機械加工だけでなく、半導体・電子部品分野のように、ウェハ・基板・フィルムなどを高精度に保持したい工程でも活用されています。
本記事では、吸着クランプの基本から、各方式の違い、従来固定方法との比較、加工・検査工程ごとの選び方までを解説します。
吸着クランプとは?ワークを面で保持する固定方式
吸着クランプとは、磁力や真空、負圧などを利用してワークを保持する固定方式です。
バイスやクランピングパーツによるクランプは、ワークを上面や側面から押さえるため、どうしても点や線に近い形で荷重がかかりやすい固定方法です。
これに対し吸着クランプは、ワークを下面側から面で保持しやすいため、固定荷重を分散しやすく、薄物や平板ワークの変形抑制に役立ちます。
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上面からのクランプ
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側面からのクランプ
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吸着クランプ
吸着クランプの主なメリット
- ワーク全体を保持しやすく、薄物や平板ワークの変形を抑えやすい
- 上面や側面のクランプ部材を減らしやすく、工具や測定子との干渉を避けやすい
- アルミや樹脂など、局所的な押さえで傷や変形が出やすいワークに対応しやすい
- ワークの反りを強制して加工、反りを強制して測定など、組付け後反りが強制されるものに対し、正しく測定、加工できる
- クランプ/アンクランプを簡略化できる場合があり、段取り時間短縮や自動化につながりやすい
一方で、ワーク材質、厚み、サイズ、必要な保持力、加工か検査かといった条件によって、適した方式は変わります。
ナベヤの「吸着クランプシリーズ」
ナベヤの吸着クランプシリーズは、方式や用途に合わせて3つの製品をご用意しています。
マグネットチャック
バキュームチャック
非磁性ワークの切削加工だけでなく、薄板状ワークを面で保持したい加工・保持用途でも検討しやすい方式です。
セラミック吸着テーブル
フィルム・基板・ウェハのように反りや浮きが問題になる工程や、押さえジグによる局所変形を避けたい検査・測定工程に向いています。
吸着クランプが活躍するワーク/工程
ワンチャッキングでワークを吸着してクランプできるので、段取り回数の削減・工程集約が実現できます。
また、複数個並列して使用することで、大型ワークの吸着クランプも可能です。
| クランプ製品 | 主な対象ワーク | 主な用途 | 特長 |
|---|---|---|---|
| マグネットチャック | 鉄系ワーク、鋳鉄、炭素鋼などの磁性ワーク |
フライス加工 面削加工 切削加工 5軸加工 |
磁力でワーク下面を保持し、 上面加工時のクランプ干渉を減らしやすい |
| バキュームチャック | アルミ、樹脂、薄板、非磁性ワーク |
非磁性ワークの切削加工 薄板加工 精密部品加工 |
真空、負圧でワーク全面を強力かつ均一に保持しやすく、 傷・変形リスクを抑えやすい |
| セラミック吸着テーブル |
ウェハ、フィルム、基板、紙、軽軟材、 薄物ワーク |
検査 測定 塗布 薄物加工 装置組込み |
真空、負圧でワーク全面を均一に保持し、 薄物ワークを高精度平面に吸着できる |
切削加工
薄板やプレート状ワークをバイスやクランピングパーツでクランプすると、締め付けによるたわみや歪みが発生し、加工精度に影響することがあります。
また、クランプ部材が工具干渉の原因になり、加工範囲や工程設計に制約が出ることもあります。


検査・測定工程
フィルムや基板、薄板ワークなどは、押さえジグで一部を固定すると、局所荷重でワークが変形し、正しい測定が難しくなることがあります。
反りや浮きがあるワークでは、測定位置が安定しないこともあります。
こうした工程では、ワークを平面保持しやすい吸着クランプが有効です。

半導体・電子部品・精密加工分野
半導体・電子部品分野では、ウェハ、基板、フィルム、FPC、薄板ガラスなど、薄く・反りやすく・局所荷重に弱いワークを扱う場面があります。
検査・測定だけでなく、ダイシング、研削、研磨、塗布などの工程では、ワークを平坦かつ均一に保持したいというケースに最適です。

工程別のおすすめ吸着クランプ
| 鉄系ワークの切削加工、5軸加工・多面加工 | マグネットチャック |
|---|---|
| アルミ・樹脂ワークの加工、薄板ワークの軽切削 | バキュームチャック |
| フィルム・基板の検査、塗布・印刷・位置決め | セラミック吸着テーブル |
| 半導体ウェハや薄板状ワークの保持 | 工程条件に応じてバキュームチャックまたはセラミック吸着テーブル |
半導体・電子部品分野ではどんな工程に向くのか
| ウェハ検査・測定 | 反りや浮きのあるウェハや基板を、平面保持しながら検査・測定したい工程。セラミック吸着テーブルが有力です。 |
|---|---|
| ダイシング・研削・研磨前後の保持 | ウェハや薄板状ワークを安定して保持したい工程。真空吸着によるチャックテーブルが使われる領域で、バキュームチャックやセラミック吸着テーブルの考え方と親和性があります。 |
| 基板・FPC・フィルムの検査、塗布、位置決め | 押さえジグによる局所変形を避けたい工程。 セラミック吸着テーブルが向いています。 |
つまり、加工寄りで薄板状ワークを面で保持したいならバキュームチャック、検査・測定・塗布寄りで高精度平面保持したいならセラミック吸着テーブル、という整理が基本になります。
吸着クランプは何の代替になる?
| 製品 | 代替候補となる固定方法 | 主な工程 |
|---|---|---|
| マグネットチャック | バイス、アジャストクランプ、サイドクランプ、専用ジグ |
鉄系プレートのフライス加工 面削加工 MC加工 5軸加工 |
| バキュームチャック |
バイス、アジャストクランプ、サイドクランプ、専用ジグ、 接着固定、松やに固定 |
アルミ・樹脂など非磁性ワークの切削加工 薄板加工 薄板状ワークの保持 |
| セラミック吸着テーブル | 接着固定、ワックス固定、両面テープ固定、松やに固定 |
フィルム基板、ウェハ、紙などの検査 測定 塗布 薄物加工 |
接着固定とバキュームチャックの比較

吸着クランプ選定で確認したいポイント
下記ポイントを事前にご確認の上、適切な吸着クランプをご活用ください。
- ワーク材質(鉄系、アルミ、樹脂、基板、フィルムなど)
- ワークサイズ、厚み、重量
- 加工工程か、検査・測定工程か
- 必要な精度や平面度
- 傷、変形、反り、浮きなどの困りごと
- 現状のクランプ方法の手間・工数などの困りごと
- 既存設備への取り付け条件
- 真空源、エア源の有無
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