ガススプリングの選定

ガススプリングとは

ガススプリングとは、密閉されたチューブ内に高圧ガス(窒素ガス:不燃性)を封入してあり、このガスの反力をバネとして重量物を持ち上げたり、支えたりする場合の補助に用いられる製品です。
小型でありながら、大きな初期荷重で小さなバネ定数が得られるため、各種機械をはじめ、家具、自動車、OA機器等に広くご利用いただけます。

  • OA機器の扉の開閉サポートに

    キャビネット

  • 車の扉の開閉サポートに

    トラックの荷台

  • 設備の扉の開閉サポートに

    カプセル用オートチェッカー

ガススプリングの特長

ガススプリングには密閉されたチューブ内に高圧ガス(窒素ガス:不燃性)とオイルが封入されており、このガスの反力をバネとして使用します。
この構造により、ガススプリングはゴムやコイルスプリング等の他の類似製品と比較して以下の特長があります。

特長
  • バネ定数が小さいため、広範囲のストロークでほぼ一定のバネ力が得られる。
  • バネ定数とガス反力を広い範囲で設定することが可能。
  • 小型・軽量。
  • 作動がスムーズ(操作力を小さくすることができる)。
    ※詳細は「操作力とガス反力の関係」で解説。
  • 用途に応じた設計が可能なため、幅広い用途に対応可能。

操作力とガス反力の関係

ガススプリングを取り付けることで操作力が小さくなるということについて、モーメントの観点から説明いたします。

1.支点回りの扉自重モーメント Mw は、 Mw=W×L1
2.ガススプリングのガス反力モーメント Mg は、 Mg=Fg×L2
3.扉を開ける方向の操作力モーメント Mh は、 Mh=Fh×L3
この場合、Mw と Mg の釣り合いにおいて、以下のようになります。
4. Mw>Mg+Mh:扉は閉まります。
(ガス反力よりも扉の自重の方が大きい)
5.Mw<Mg+Mh:扉は開こうとします。
(扉の自重よりもガス反力の方が大きい)
6. Mw=Mg+Mh:ガススプリングを取付けた扉が開閉せず、その場所で釣り合います。
以上より、想定した操作を扉に加えた場合、ガススプリングが必要とするガス反力は、使用ガススプリングが n 本の場合、以下のようになります。
7.fg= (W×L1-Fh×L3)n×L2

ガススプリングの選定方法

ガススプリングの選定には、ガス反力、ストローク、最大長、取り付け位置などの諸元が必要になります。
その諸元によって扉などを開閉するのに必要な力(以下、操作力とします)が異なります。
選定にあたっては、「選定上の注意」、 「使用上の注意」を十分お読みになってください。

手動での簡易計算方法

ガススプリングを取り付ける構造物の仕様により、大まかな取り付け位置を決め、必要ストローク、最大長を求めます。
そして、これに見合った製品を選定し、先に設定した取り付け位置にあてがい、選定した製品のガス反力が適当なものかを以下の手順にてチェックしてください。

全開時

全開時にガススプリングの力で、扉を開いた状態で保持するためには、次の操作力を設定します。
5.Mw<Mg+Mh
このときの操作力は、「操作力とガス反力の関係」の計算式7より、以下の計算となります。
8.fh= (W×L1-n×Fg×L2)L3

一般的には、この値が2~7kg となるようにします。
Fh がマイナスのとき、扉はガス反力だけで開いてしまいます。
これを防ぐため、掛け金・ステーなどのロック機構で扉を固定する必要があります。

全閉時

全開時と同様に、ガススプリングを取り付けた状態の操作力は以下となります。
8.fh= (W×L1-n×Fg×L2)L3

一般的には、この値が2~7kg となるようにします。
Fh がマイナスのとき、扉はガス反力だけで開いてしまいます。
これを防ぐため、掛け金・ステーなどのロック機構で扉を固定する必要があります。

途中行程

ガススプリングと支点との距離およびガス反力が扉の開閉により変化していきますが、前述の全開時、全開時と計算方法は同じとなります。
一般的にこの途中行程で、支点回りの扉自重モーメントMw とガススプリングのガス反力モーメントMg の釣り合い操作力が0(零)となる点が存在します。
ただし、全開時と全閉時のどちらも操作力の符号が同じ(プラス、マイナス)である場合、釣り合う点がないことになります。

以上の計算結果が適当でないときは、取り付け位置や使用ガススプリングを変更するなどをして再度チェックを行ってください。

選定プログラム

ナベヤではガススプリングの選定を自動で行うことのできる「ガススプリング選定プログラム」をご用意しております。
希望の選定結果にならない場合は入力値を変更し調整してください。簡易動作寸法図により実際の位置関係を確認することができます。