マシニング加工用ジグの役割~加工環境(加工文化)に合わせる~
はじめに
ワークをマシニング加工する際に必要なジグは、様々な条件(ワーク材質、加工ロット等)によって求められる機能や能力も変わります。
ここでは、ジグを検討するにあたり、基本となる自社の加工環境(加工文化)に合わせてどのようなことを考えるべきかわかりやすく解説しています。
なぜ加工環境(加工文化)に合わせたジグが必要なのか
一般的にジグの設計は設計者がワークと加工機をもとに設計します。
しかし、実際に現場で使用すると段取りに想定以上の時間がかかったり、加工精度が安定しなかったりする場合があります。
これは作業者のスキルや通常使用している工具、ジグの作業性を考慮せず、ワークと加工機の条件だけで設計したことが原因の一つとして挙げられます。
もし通常行っていない位置決め方法のジグを設計した場合、そのジグを使用する作業者に段取りのスキルがなければ、作業に時間がかかり生産効率は上がりません。
そのため、ジグを設計製作する際は、ワークと加工機だけでなく、加工や段取りのスキルを含めた加工環境(加工文化)を把握し、ジグの役割を明確にする必要があります。


自社の加工環境(加工文化)を把握する
ジグを検討する前に最も重要なことは、自社の加工環境(加工文化)を把握することです。ここからは加工環境(加工文化)の定義や違いを解説していきます。
加工環境(加工文化)とは
加工環境(加工文化)とは、作業者や設備など全てを対象に自社の加工能力や工程を示したもので、各社が所有する設備やジグ、それらを使用する作業者によって構成されています。
この構成する設備やジグ、作業者の条件は各社で同一になることはありません。そのため加工環境(加工文化)は各社によって異なります。
加工環境(加工文化)の違い
加工環境(加工文化)は各社によって異なりますが、どのような違いがあるのでしょうか。以下の表は同じワークを同一精度で加工した場合の環境の違いを示しています。
A社は5軸加工機と加工スキルの強みを生かし、B社は立形・横形加工機で豊富なジグと構築ノウハウの強みを生かして精度や生産性を確保しています。
このように同じワークでも加工方法や能力は異なり、加工環境(加工文化)の違いを理解できます。
A社 | B社 | |
---|---|---|
加工環境 (加工文化) |
加工スキルと複合機で 工程集約し、生産性・精度を確保 |
豊富なジグとノウハウで 生産性・精度を確保 |
所有設備 | 5軸制御マシニングセンタ | 立形、横形マシニングセンタ |
ジグ |
多面加工できるワンチャッキングジグ |
工程別にジグで外段取り化 高精度に素早く段取り替え |
加工環境(加工文化)を把握するには
加工工程は設備やジグ、作業者などによって構成されており、加工環境(加工文化)の把握にはそれぞれの能力や特性を理解する必要があります。
能力や特性は、作業者や設備やジグなどに対して剛性や精度、スキル、操作性の状態を明確にすることです。
これらを明確にすると加工工程のどこに強み・弱みがあるのかを理解でき、自社の加工環境(加工文化)を把握することができます。
ジグの役割を明確にする
加工環境(加工文化)を把握したうえでジグの役割を明確にしていきます。
ジグ)の定義を理解し、どのようにジグを検討すればよいのかを解説していきます。
ジグ(治具)とは
「ジグ」とは加工する際に、ワーク(工作物)を取り付け、位置を決めたり、加工の案内をしたりする補助工具のことです。
基本的にジグはワークが常に一定の位置で決まり、固定・取り外しが容易にできないといけません。
また、「取り付け具(fixture)」というワークを取り付ける役割があり、加工案内部(jig)を持たない工具も総称としてジグと呼ばれています。
加工文化に合わせたジグの検討
前述では加工環境(加工文化)の把握によって自社の強み・弱みを理解してきました。
ここでジグを検討する際に重要なことは強みの部分を生かしながら、弱みの部分をカバーできるように考慮することです。
例えば、加工スキルは高いが、段取りスキルに弱みがある場合、段取りが素早く高精度にできるジグを導入し、誰でも規定時間内に段取りできるようにすることなどが挙げられます。
これはあくまで一例ですが、弱みの部分を考慮した最適なジグを製作することによって効率的な加工現場にすることができます。
マシニング加工用ジグの製作にお困りの方
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