除振・防振アカデミー

【対策の手順】振動障害を対策するまでの工程とは?

振動障害を対策するには、要因となる振動の把握から稼働確認まで多くの工程があります。
ここでは、対策するまでの一連の工程を分かりやすく解説します。

障害振動の把握から対策まで

1.障害振動を把握する

振動元の確認

影響を及ぼす振動はどこからきているのか?振動を発する設備はなにか?障害の起因となっている振動の発生元を特定します。
振動発生元は振動元と思われる機器の動作をOFFにして、障害が継続するか、障害が無くなるかで特定できます。
振動の発生元が特定できたら振動の発生元側で対策を行うか、障害を受けている側で対策を行うかを決定します。

(例)振動元が設備稼働時に振動が発生している

振動元の特定

障害状況の確認

発生している障害状況を把握します。
障害状況は、振動許容基準の設定や対策製品の選定のために必要になりますので、揺れているなどといった体感的なものではなく、10μなど具体的な数値で把握します。

(例)設備稼働時に測定値が10μmバラついている

設備稼働による揺れの影響

振動か揺れかの障害要因判断

障害原因が振動か揺れかの判断をします。
重心位置の高低差や剛性有無により揺れが発生している場合は、重心を下げる、剛性を上げる対策を行い、振動障害であれば振動対策を行う検討を進めます。
右図のように、作業台の剛性や対象物の重量による重心位置の高低差により発生する揺れの障害は振動と切り分けて対策を行います。

振動か揺れかの障害要因判断

障害振動の性質の確認

振動の性質により対策方法が変わるため、障害を起こしている振動がどのような振動の性質かを把握します。
10μmのバラつきはあるが、障害振動の周波数が分からない場合などは振動測定により解析が必要です。
測定し解析すると右図のように、10μmの要因は40Hzの振動であると把握出来ます。
解析には2つの項目が必要となります。周波数は必須として、速度・変位・加速度の3つの内どれか1つとなります。この2つの項目が分かれば振動の解析は可能です。

弊社でも振動測定・解析(有償)で対応しております。

(例)10μmのバラつきは40Hzの振動によるものと特定

振動測定の解析データ

2.振動許容基準を設定する

障害振動をどこまで抑えなくてはならないか基準を明確にします。
ある程度揺れが収まれば良いなどの体感的な指標は個人差が大きく適正な対策が行えないため、「10μmのバラつきを2μm以下に抑える」などの具体的な数値で基準を設定します。

(例)振動許容基準はバラつきを2μm以内とする

許容(合格)基準を設定する

3.振動許容基準を満たす伝達特性(必要な減衰効果)を確認する

設定した振動許容基準に対して、特定している障害振動の性質を何倍に減衰させなければならないかを明確にします。
10μmのバラつきを振動許容基準の2μmに抑えるためには、障害振動の周波数40Hzを0.2倍(1/5倍)に減衰できる性能が製品に必要と判断するためです。

(例)40Hzの障害振動を0.2倍に減衰させること

許容(合格)基準を満たす伝達特性(必要な減衰効果)を確認する

4.減衰できる特性をもつ製品を選定する

障害振動を振動許容基準まで減衰可能な製品を製品の特性グラフから選定します。
2項で把握した障害振動の周波数40Hzの振動を0.2倍(1/5倍)に減衰する性能を右図の製品の特性グラフで確認ができます。
また、1項で把握した振動は減衰できるが、揺れが大きくなるなど稼働時に不具合が発生しないように、設備、装置の稼働特性も考慮します。

(例)40Hzの振動を0.2倍にする減衰特性をもつ製品

減衰できる特性をもつ製品を選定する

5.対策製品を導入、効果を確認し対策完了

対策製品の設置を行い、障害振動が減衰でき稼働時に支障がないか確認します。
障害振動がある場合でも、設定した振動許容基準を満たし、稼働時も問題が出なければ対策完了となります。

(例)製品導入、効果、使用上問題無しで対策完了

対策製品を導入し効果を確認し対策完了

このように振動対策を行うためには、状況確認、判断からデータの取得、振動許容基準、伝達特性の設定、対策製品の選定から設置、使用上の確認の流れで実施します。振動も基礎、基本、手順を理解すれば確実な対策を行うことができます。
それでは振動対策を行い、より良い生産環境をつくっていきましょう。


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