治具ってすごい!アカデミー

第8回 クランプのポイント

「治具ってすごい!アカデミー」第8回ではクランプのポイントとクランプ力について解説します。
適正にワークを固定し、安定した加工を行うための方法を学びましょう。

クランプ

対象ワークの特長(形状・大きさ・精度・加工数量など)と、取付けベース・工作機械の能力や切削力および、その他の治具エレメントなどを考慮してクランプ部品は選定する必要があります。

クランプ
クランプ

クランプ時の注意

クランプバーでワークを押さえる場合、適正な加工を行なうためにワークの変形や浮上がり、クランプ力不足など加工不良が発生しないように様々な要因を考慮する必要があります。

クランプバーが傾いた状態でワークを無理に押さえ付けてしまうと、ワークがクランプバーに倣いワークが傾いたり変形が発生します。
ワークが歪む
ワークが歪む
クランプバーの真下にワークの受けが無いとワークが傾き安定した固定が出来ません。

ワークが浮き上がる
ワークが浮き上がる
クランプ力に対しクランプバーの剛性が弱いとクランプバーが変形したり、繰返しの使用により最悪の場合破損する場合があります。


クランプの剛性不足
クランプの剛性不足
クランプバーが傾いても適切なクランプが出来る
クランプバーが傾いても適切なクランプが出来る

クランプ力の求め方

希望のクランプ力を得るためには、ネジに加えるトルクと軸力の関係を知る必要があります。

●トルクとは?
ネジの軸中心に対しスパナ長さとスパナを回す力の積で表され、トルクの大きさによりネジの軸力(クランプバーを押す力)が決定されます。

クランプ力の求め方

T系列でのトルクと軸力の関係(トルク係数を0.2としています)

呼び径 T系列
[N.m]
軸力[kN] 0.5系列[N.m] 軸力[kN] 1.8系列[N.m] 軸力[kN] 2.4系列[N.m] 軸力[kN]
M8 12.5 0.8 6.2 0.4 22 1.4 29.5 1.8
M10 24.5 12.3 12.2 6.1 44 22 59 29.5
M12 42 17.5 21 8.8 76 31.7 100 41.7
(M14) 68 24.3 34 12.1 120 42.9 166 59.3
M16 106 33.1 53 16.6 190 59.4 255 79.7
(M18) 146 40.6 73 20.3 270 75 350 97.2
M20 204 51 102 25.5 370 92.5 490 122.5
(M22) 282 64.1 140 31.8 500 113.6 670 152.3
M24 360 75 180 37.5 650 135.4 860 179.2
用途 一般 電子製品 車両・エンジン 建設

同サイズのネジでも、摩擦、表面処理、硬度等の微妙な違いで軸力にはバラツキが発生します。
上記表はおおよその目安であるため状況に応じてご確認下さい。

●クランプバーでのクランプ力計算

ネジにトルクを加えることにより、発生する軸力でクランプバー両端に加わる力が下式で算出できます。
F= fa + fb ── ①
fa・a = fb・b ── ②

F (kN) :ネジの軸力 fa = F・b / (a + b)
a (cm):締付部~クランプ端の距離
b (cm):締付部~ジャッキ端の距離
fa(kN):クランプ端に加わる力
fb(kN):ジャッキ端に加わる力

例) F= 30kN
a= 5㎝
b= 10㎝の場合
②式より
fb = fa・a / b
①式に代入してクランプ端に加わる力は
fa = F・b / a + b
= 30 × 10 / 15
= 20(kN)
又、ジャッキ端に加わる力は
fb = F-fa
= 10(kN)
となります。

支持ポイントにより、クランプ力が大きく変わるため必要なクランプ力を得るためには注意が必要です。

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