防振製品の選定は、「障害振動数」「レベルコントロールの有無」より、1.障害となる振動数を減衰できる、2.固い・柔らかいの選択、3.支持重量からの選択が基本になります。
重心移動が激しい工作機械には、防振プレートや防振パッドで対策するのが一般的です。
防振プレートや防振パッドでとりきれない低周波の振動を取りたい場合には、コイルばねや空気ばねを使ったマウントを使います。
しかし、低周波の振動が取れるもの(柔らかいもの)では、揺れが大きくなったり、機械の剛性がキープできなくなったりする場合がありますので、注意が必要です。
機械の剛性が問題になる場合には、除振台として設置する方法もあります。具体的な対策については、別途ご相談ください。
振動伝達率Tr=伝達力/加振力です。例えば、床と装置の間にTr=1/20の除振・防振製品を置いた場合、床の振動(加振力)が20ならば、装置に伝わる振動は1になります。
「dB」には2つの意味があります。絶対振動レベルと相対振動レベルです。絶対振動レベルは、加速度1cm/sec²=60dB(おおよそ震度1に相当)、振動や騒音の基準などに用いられます。相対振動レベルは、振動の比を20log(振動量の比)で表したものです。床と定盤の間に除振・防振製品を設置した時を例にとると、20log(定盤の振動/床振動)で計算します。たとえば、定盤の振動が床振動に対し10倍のとき、 20log(10) = 20(dB) と表します。また、1の時0dB(増減なし)、1/10のとき-20dB、1/100のとき-40dBと表します。
振動の分野では、振動伝導率を 20log(伝達力/加振力)で計算しますので、(伝達力/加振力)が1より小さいとマイナスで表されます。つまり振動が減衰されているときはマイナス、増幅されているときはプラスになります。0のときは、加振力と伝達力が同じとき、減衰も増幅もない状態です。
除振、防振製品を大別すると以下のような種類があります。
①ゴム、ウレタンなどの素材を使ったもの
構成がシンプルで安価なものが多いです。比較的高い周波数の振動除去に適しています。
②コイルばね、空気ばねを使ったもの
①に比べると構成が複雑で価格が割高になります。低周波振動の除去が可能です。
空気ばねは鉛直方向には柔らかく、低い周波数から除振・防振ができます。水平は硬めなので、振り子のような構造を付加して実質的に柔らかい特性を得る場合があります。空気の量を調整してレベル出しができます。
③電気制御をつかったもの(アクティブ除振)
共振周波数付近の振動を除振できる点で他の製品より優れています。振動センサーや電気制御を用いるため大変高価です。
いろいろな組合せや性能差があり、用途によって使い分けがされております。 一概にこれがベストとは言えません。
防振と除振
何れも有害な振動を小さくすることを示しますが、それぞれ、振動を出さないようにする、振動を受けないようにするという意味で使い分けされます。図を参照してください。
耐震と免震
何れも建物の地震対策の方法を示しますが、耐震は建物の剛性を高めて揺れに耐えるようにすること、免震は地震の揺れを直接受けないようにすることです。
振動の伝わりやすさは素材の特性によって変わります。
例えば弊社の本業である鋳物同士の振動の伝わりやすさを比較すると、ねずみ鋳鉄(FC)とダクタイル鋳鉄(FCD)とでは、ねずみ鋳鉄の方が伝わりにくいです。叩いたときにボコッという音を発生するねずみ鋳鉄と、カ~ン(長く響く)という音を発生するダクタイル鋳鉄では、後者のカ~ンという音を発生させるダクタイル鋳鉄の方が振動を伝えやすいのが想像できるかと思います。
この振動の伝えやすさの違いは内部減衰率が影響を与えます。つまり叩いた時にカ~ンというダクタイル鋳鉄はボコッというねずみ鋳鉄より内部減衰率が低く、振動を嫌う機械設備の素材を考えた場合は、内部減衰率が高く振動を伝えにくい、ねずみ鋳鉄の方が向いていることが分かります。(逆に楽器では内部減衰率が低い方が音響的に優れていると言われます。)
また、素材の特性によって、伝わりやすい振動周波数が異なります。同じ形状の素材の比較であれば E( 縦弾性係数 ) /ρ( 密度 ) の値の高いもの、分かりやすく言うと、軽くて曲がりにくい素材の方が高い周波数の振動を伝えやすいです。
有償にて承りますので、お取引先商社様かお問い合わせページより詳細をご連絡ください。