除振・防振アカデミー

第3回 除振・防振の方法

同期と共振と除振

「同期」「共振」「除振」の状態を水風船で例えます。
手をゆっくりと上下に動かすとゴムは伸び縮みせず、手と同期して動きます。これが「同期」の状態です。
次に手の動きを早くして水風船が上下するタイミングに合わせて手を上下に動かすと、水風船が大きく上下に動き手よりも大きくなります。これが「共振」の状態です。
次にさらに手の動きを早く上下に動かすとゴムが延び縮みして手の動きよりも水風船の動きが小さくなります。これが、「除振」の状態です。

この例の場合、手は「振動源」、ゴムは「除振・防振製品」、水風船は「除振製品」、手を振る周期は「振動周波数」となります。
同期 手をゆっくりと振る
→手と水風船が同期して動く
共振 手を水風船の上下のタイミングに合わせて振る
→手の動きに比べ水風船が大きく動く
除振 手を早く振る
→手の動きに比べ水風船が小さく動く

ポイント

振動の周波数によって、「同期」、「共振」、「除振」のように除振対象の挙動が変わります。問題となっている振動の振動周波数に対して、「除振」の状態になる除振・防振製品を選定することが重要です。除振・防振製品の選定を正しく行わず、「同期」、「共振」の状態になってしまうと振動問題が改善しない、あるいは悪化することがあります。

除振・防振性能を表す伝達特性について

振動伝達特性は、横軸に振動周波数、縦軸に振動伝達率をとったグラフです。
水風船の例で解説した同期、共振、除振の状態を細かく表したものと考えてください。
以下は振動伝達特性を説明するための図です。
AとBは振動を表しています。

Aは床の振動、Bは除振対象の振動を表します。

以下が振動伝達率のグラフです。(振動伝達率τ[dB]を倍率にするときは、10^(τ/20)[倍]とします。)

上図の振動伝達特性の時、振動をイメージで表すと以下のようになります。

共振周波数(固有振動数)の計算方法

共振周波数(固有振動数)は「除振対象の質量(水風船の重さ)」と「バネの強さ(ゴム紐の強さ)」から求めることができます。

ポイント

式を見てわかる通り共振周波数は除振対象の質量によって変化し、それに伴って伝達特性も変化します。同じ除振・防振製品を使っていても搭載する除振対象の質量が軽くなると下のグラフの実線から点線のように共振周波数が高周波側にずれた波形となり、除振できたものが増幅に転じる場合があります。
必ず、除振対象の荷重にあった除振・防振製品を選定してください。

※質量が軽いと効果が出ない場合があります

除振・防振特性の表記例と詳しい読み方

振動伝達特性を表したグラフ

次のグラフの場合、除振・防振の対象となる振動が40Hzと仮定すると、縦軸の振動伝達率は-10dBなので、床の振動の大きさを1とした時、振動は約1/3(0.32倍)に減衰します。
一方、対象となる振動が22Hzの場合は、振動伝達率は10dBなので、振動は約3倍に増幅します。振動伝達率が0より大きくなる周波数は増幅しますので注意が必要です。
最も増幅する周波数が除振・防振製品の「共振周波数(=固有振動数)」になります。

共振周波数を表したグラフ

特性データは除振・防振製品の選定をする際の指標として使用されるものです。搭載荷重に対する製品の共振周波数(または固有振動数)を読み取り、目安として、除振・防振したい周波数の「1/2(0.5倍)以下」のものを選びます。
例えば、1つのマウントにかかる荷重が300N、回転数が2,400rpmのポンプの振動を除振したい場合、次のように選定を行います。

  1. ポンプから発生する振動周波数を計算します。この場合、2,400回転/60秒=40Hzになります。
  2. 40Hz/2=20Hz以下で荷重300Nに適応したものを選定します。

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